写真はイメージです(mits_PIXTA)
週刊東洋経済 2020年9/12号
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東京都内で小さな印刷会社を営む70代の男性は今年7月、「新型コロナで気がめいるから暑気払いでもしようではないか」と社長仲間に誘われ、飲み会に参加した。

「暗い話は御法度ね」という当初の約束はどこへやら。話題はすぐさま新型コロナウイルスの影響に及び、業績悪化の話はもちろんのこと、あとどれくらい資金が持ちそうかなど、口をついて出てくるのは深刻な話ばかりだった。

そんな中、参加者の一人がぼそっとつぶやいた。

「取引先から聞いたんだが、あいつの会社、倒産して自己破産したらしいぞ」

その会社はここ数年、業績が芳しくなく、新型コロナでついにとどめを刺されたというのだ。

「めぼしい財産は全部持っていかれて、当面の生活費という名目で99万円しか残してもらえなかったらしい。離婚して一家離散だって。倒産は怖いわ」

そんな話を聞きながら、男性は自身の会社に思いを巡らせていた。ここ数年は技術の進歩についていけず、会社を維持していくので精いっぱいだったからだ。

従業員たちのことを考えると、会社は潰したくない。しかし一人娘は嫁いでしまい、会社を継がせようにも後継者がいない。どうしようかと悩んでいるところで新型コロナに襲われてしまい、男性は「みんなを守りたいが、いったいどうすればいいんだ」と暗澹(あんたん)たる気持ちになった。

2025年問題が前倒し

この男性のみならず、中小企業経営者たちの多くが同じような悩みを抱えている。

下の図を見ていただきたい。これは中小企業庁などの調査を基に中小企業の2025年の課題についてまとめたもの。それによれば、70歳未満の経営者が約136万人なのに対し、70歳以上の経営者は約245万人と2倍近く、高齢化の進んでいることがわかる。

[図表1]

そのうち、実に半数以上の127万人が「後継者は決まっていない」と答えている。その結果、61.4%の中小企業が、後継者に事業承継できずに、黒字であるにもかかわらず休廃業や解散に追い込まれているのだ。