事業承継には従業員との丁寧なコミュニケーションが不可欠だ(Graphs / PIXTA)

「最初は、共に成長していきましょうという感じだったのだが……」

静岡県で建築用金属の製造加工業を営む会社のS社長は、この1年間に起きたことを振り返り、そうつぶやいた。

「この会社、後継者がいなくて困っているのですが、買ってみませんか」

取引先の金融機関担当者から、ある部品加工会社の買収を持ちかけられたのは、2017年12月のこと。創業者である当時の社長が体調不良のため、退任を望んでいた。しかし、後継者は不在。業績は黒字で、従業員の雇用を維持するためにも事業を継続させたいと考えていた。

担当者とともに同社を視察したS社長は、「工場では40年ほど前の、まるで骨董品のような機械を使っていた。社用の携帯電話もなく、パソコンも経理の机に1台あるだけ。この状態で利益を出せているのなら、やりようによっては業績を大きく伸ばせるかもしれない」と感じたという。