競争を促し、雇用を守る デジタル・ニューディール提唱
評者/スクウェイブ代表 黒須 豊

『邪悪に堕ちたGAFA ビッグテックは素晴らしい理念と私たちを裏切った』ラナ・フォルーハー 著/長谷川 圭 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)
[Profile] Rana Foroohar 1992年に米コロンビア大学バーナード校を卒業。ニューヨークを拠点に、フィナンシャル・タイムズ紙でグローバル・ビジネス・コラムニストを務める。また、CNNのグローバル経済アナリストとしても活躍している。著書に『Makers and Takers』。

本書は、フィナンシャル・タイムズのコラムニストによる個別業種批評の第2弾である。金融市場が対象の前作に続く本作は、IT市場のビッグテックと呼ばれる巨大企業群が、設立当初の素晴らしい理念を放棄してユーザーをだましている現状を鋭くかつ批判的に描出する。

ビッグテックの技術は税金を投じて開発されたものでありながら、彼らは利益を納税者に還元していない。さらに、彼らは高い時価総額を誇る一方で、史上最も雇用機会を喪失させたと手厳しい。

また、彼らのサービスや製品は、スタンフォード大学で開発された「カプトロジー」と呼ばれる説得技術を駆使してユーザーのモバイルゲームやアプリに対する依存度を高めているのだという。 

その結果、われわれは常にスマホが気になり、1日平均2600回以上もチェック(タップ、スワイプ、クリック)しているという。この状態が続けば、多くのユーザーの精神的健康に悪影響を及ぼすことになると警告する。実際、著者が本書を著した動機は、自身の子供がゲーム中毒になりかけたことにある。

著者はビッグテックを規制すべきだと強く主張する。ビッグテックを規制して個人のデジタル権利を保護するとともに、弱小企業におけるイノベーションを喚起して、健全な競争を促し、さらに雇用を守る政策の必要性を訴える。

市場を独占したビッグテックは、自分たちの効率追求からAI等を導入して自動化を図り、やがて大量解雇を行うようになると推測する。

対策として、著者が提唱するのがデジタル・ニューディール政策である。

自動化によって失われる業務分野がある一方で、カスタマーサービスやデータ分析などは、失われる雇用と同じくらい多くの才能が必要とされるはずであると予測し、従業員の雇用維持や新業務への再訓練を約束する企業を税制上優遇すべきだとする。

著名ジャーナリストがビッグテックの負の面をえぐり出す文章は辛辣ではあるが、納得させられる部分が少なくない。巨大化し過ぎた独占企業が引き起こしている問題は多く、主張は筋が通っている。

ただ、根拠データの提示は十分とは言えない。前述の今後増加するというカスタマーサービスやデータ分析についても、なぜそう言えるのかについての記述が乏しい。

著者の感情がやや強く出ている印象を受けるが、ビッグテックの将来を展望する上で、本書が参考になる一冊であることは間違いないだろう。