客観的データを用いた政策評価の重要性への理解が、近年は政策の現場にも広がりつつある。本稿では、こうした事後評価を、「研究に関する政策」の対象であるわれわれ研究者に当てはめて考えてみる。具体的には、研究者の研究費獲得とその成果について、エビデンスに基づいた評価を行う。政策評価の目的は、政策に成績をつけることではなく、よいものを評価し、うまくいっていない政策を改善することだ。本稿の分析も、有力者の言説や何となくの空気感で決まりがちな大学・研究分野の政策を、エビデンスに基づくサイエンス振興に転換させるのに役立つはずである。

早稲田大学の大湾秀雄教授と筆者は、研究者の、とくにわれわれ自身もサンプルとして含む経済学者のデータを用いて、科学研究費補助金(科研費)の配分と研究成果の関係性を実証的に分析した。科研費とは、税金を財源とする、国内の大学研究者が最も頼りにする外部資金である。その配分の仕組みは競争的だ。応募時のプロポーザル、すなわちどのような研究を行うかの企画・提案を複数の匿名かつ同分野の研究者が審査して数値化し、そのスコアに基づいて上から順に配分が決まる。

研究費と研究成果の関係性を分析する場合に問題となるのは、因果関係の識別の難しさだ。研究費が配分された研究者とそうでない研究者のアウトプットを単純に比較するだけでは足りない。仮に前者で成果が高いことを示す結果が得られても、研究費の配分によって成果が出たのか、もともと優秀な研究者だから、あるいは優れた研究プロポーザルだから成果が出たのかを区別できないからだ。