写真はイメージです(Graphs / PIXTA)
週刊東洋経済 2020年9/5号
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書店には、「〇〇を食べたらがんが消えた!」といった派手なタイトルの本がたくさん並んでいる。ネットの記事や広告でも、同じようなフレーズをよく見かける。こうした情報に接しているからだろうか、がんと診断された後に、「食事を変えればがんが治るのではないか」と考える患者さんは少なくないようだ。

では、がんと食事との関係は科学的にはどこまで判明しているのだろう。筆者は医療データ分析の専門家で、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校で、大学院生に医療データの解析方法や論文の読み方などを指導している。本稿では、がんと食事との関係について、科学的な根拠が十分な研究結果を基に、「わかっていること」「わかっていないこと」を紹介しよう。

食事によって、がんになるリスク(確率)が上がったり下がったりすることは信頼度の高い研究からわかっている。ただし注意すべきは、現在健康な人が食生活を変えてがんになるリスクを下げることと、いったんがんを患った人が食生活を変えてがんを治すこととは、別問題であることだ。

現時点でわかっているのは、健康な人が食生活を変えることでがんになるリスクを下げることはできるものの、一度がんを患った人が食生活を変えても、がんを治すことはできないと考えられる(そのような効果が認められた食事法は存在しない)ということである。

食事法を採点する

2010年、英国の研究者グループが、グーグルなどの検索エンジンや医学雑誌を調査し、「がんに効く」とうたっている食事法を調べた。その結果、何の根拠もないでたらめのものを除き、22種類の食事法が見つかった。それが下の一覧表である。22のうち、4つは効くか効かないかについて「研究からわかっていること」が曲がりなりにもあるが、残りの18はそもそも何もわかっていなかった。調査での結論は、「今のところがんを治す可能性がある食事法は存在しない」だった。