今年3月、新型コロナウイルスの第1波が始まった時期に、私は1人のがん患者から相談を受けた。ローカルテレビ局・元代表の奥本健氏(70代)は、6年前に大腸がんステージ3で手術。いったん寛解したが、3年後に肺移転がわかり再び手術を受け寛解した。だが今年、肺に影があると診断を受けた。それで自由診療のがん免疫療法を検討しているという。

「2度目の肺への転移ですからもう助からないかもしれない。そこで第4のがん治療といわれている免疫療法に目が向きました。多くの本を読みましたが、その中ですばらしい経歴と実績を持つ、免疫療法の研究者に感銘を受けました。この人が書いているなら、免疫療法は信用できると考えたのです」

その研究者は元東大教授で、メディアにも登場する著名な人物だ。

自由診療の免疫クリニックは、有名大学の元教授やがん専門病院の元関係者などが顧問に就任している。彼らの肩書は、患者に絶大な信頼を得ているからだ。

奥本氏は関西の免疫クリニックを訪ね治療相談をしたが、強い違和感を覚えたという。報道記者だった人らしい職業的直感だった。

「治療効果のエビデンスを聞くと明確に答えず、こんなふうに効いたというアバウトな説明でした。それに治療費が非常に高くて、1クール150万〜300万円。とりあえず、がん細胞を冷凍保存しましょうと執拗に勧める姿勢に、強い違和感を抱きました」