京都大学特別教授 本庶 佑(ほんじょ・たすく)1942年生まれ。66年京都大学医学部卒業。米カーネギー研究所客員研究員、米国立衛生研究所客員研究員、京都大学医学部長などを経て2017年から現職。PD-1の発見者。ロベルト・コッホ賞、文化勲章など受賞・受章多数。18年にノーベル生理学・医学賞受賞。(撮影:尾形文繁)
週刊東洋経済 2020年9/5号
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がん細胞は、免疫細胞からの攻撃を逃れることで増殖を続ける。免疫の働きのブレーキ役になるのが、PD-1という分子だ。本庶佑教授は免疫チェックポイントと呼ばれるこの分子を発見し、その働きを妨げる抗体を治療に応用することで外科手術、放射線治療、化学療法に次ぐ第4のがん治療法を確立させた。

──世界中で免疫チェックポイント阻害薬が開発されています。PD-1発見が、がん治療に与えたインパクトをどう捉えていますか。

免疫チェックポイント阻害薬が登場するまでのがん治療には、外科手術を除けば放射線治療と化学療法の2種類があった。これらの治療法との大きな違いは、抗PD-1抗体では完治割合が上がったこと。また、投与をやめるとすぐにがんが大きくなるこれまでの治療法と比べて、効果が長く続くことも異なる。がん細胞が免疫細胞にかけているブレーキを外すという仕組みを応用すれば、1つの薬剤であるのに、原理的にはすべてのがんに適用が拡大されることも十分に考えられる。

がん治療薬の開発では、抗PD-1抗体とほかの薬剤を組み合わせて薬効を高める臨床試験(治験)が圧倒的に主流になっている。この流行が、短くてもあと4〜5年は続くだろう。免疫制御によるがん治療は、免疫チェックポイント分子を外しては考えられなくなった。

──「PD-1の発見は偶然だった」と説明しています。この分子の発見とがん治療は、どうつながったのでしょうか。