最近では1回の照射で治療を終える研究や、がん免疫療法と併用する新治療の検討も進む(時事)

「日本発の夢の治療法になる」。約30年間、こうした期待をかけられながら、なかなか飛躍できない技術がある。巨大な装置を用い、外科手術なしにがん細胞を取り除く「重粒子線治療」だ。

光の速さの70%程度まで加速した炭素イオンをがん病巣に集中的に照射することで、周囲の正常細胞へのダメージを極力抑えながら、がん細胞を除去する。類似の治療法に炭素より軽い水素イオンを用いた「陽子線治療」があり、こちらは設備の規模やコストを比較的抑えられる一方、重粒子線のほうがピンポイントに狙った病巣に照射しやすいなどの特徴を持つ。

身体を切らず痛みもなく、高齢者にも行える次世代の技術として、放射線医学総合研究所(放医研)が1993年に世界で初めて医療用の装置を千葉市に建設。国の予算326億円を投じ、10年がかりで縦横120メートル×65メートルに及ぶ巨大な治療装置をつくり上げた。

放医研は翌94年から難治がん治療を開始し、2001年には国内2番目の重粒子線治療施設を持つ兵庫県立粒子線医療センターが開設された。03年には、保険診療と保険外の技術を組み合わせて実施することを認める「高度先進医療」(現在の先進医療)に重粒子線治療が入った。これで3割以下の自己負担で済む保険診療分に、重粒子線治療の費用314万円を追加で支払えば、がんが転移なく1カ所に固まっている場合に、重粒子線治療を受けられることになった。