アフリカは本当に、「希望の大陸」へ羽ばたくのか 千葉商科大学人間社会学部 准教授 吉田 敦氏に聞く

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よしだ・あつし 1973年生まれ。明治大学大学院商学研究科博士課程、仏パリ第10大学DEA課程修了。パリ第1大学博士課程、一般財団法人海外投融資情報財団特別研究員などを経て現職。共著に『世界経済の解剖学』『モロッコを知るための65章』『アルジェリアを知るための62章』など。(撮影:風間仁一郎)
アフリカ経済の真実 ――資源開発と紛争の論理 (ちくま新書)
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動き始めた獅子、希望に満ちた大陸──。最後の成長市場としてアフリカに熱視線が注がれて20年。この間世界平均を上回る成長率をあげながら、いまだ貧困イメージを抜け出せないのはなぜなのか。「資源開発と紛争」を切り口に観察してきた著者が語る、いまだ色濃い負の部分。

外資依存を抜け出せない、真の発展へ導く指導者が不在

──近年の経済状況は?

僕が調査した国では、モロッコなどが成長しています。地理的に欧州に近く、工業団地の下請け企業が輸出している。アルジェリアなど産油国は2004年から08年にかけて平均5%超の成長をしてきた。ただそれはマクロ統計の話。実際に経済を好循環させ雇用を拡大させているかというと別です。

10年代以降原油価格が下落すると、資源収益で貯め込んだ安定化基金を取り崩していて、アルジェリアではだんだん底を突いていっているところですね。鉱物資源が豊富なマダガスカルなどは、今は海外からの直接投資も入っていない。多くの資源国で産業の多様化や国民の生活水準底上げに至っていません。むしろ硬直的な権力体制を肥大化させ、国が抱える病をさらに進行させている気がします。

──依然として紛争も多いですね。

多様な要素が絡み合っています。1960年代前半の独立以降、多くの国が国民国家建設で失敗しました。自らの手に自国の地下資源を取り戻し、早急に経済成長を遂げようと、国営企業を軸とした中央集権的政策を急いだ。当時は社会主義型が工業化成功への近道だと信じられたんです。

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