日本のクラシック音楽の歴史そのものともいえるN響の歴史をつづる一冊。表紙写真は第1回定期公演の様子

「一九二六(大正十五)年十月五日、東京・数寄屋橋畔の雑居ビルの二階に、四十数名の音楽家たちが一堂に会していた。集まった面々は戸外に出ると、三年前の関東大震災の傷跡が残る小さな公園で、焼け残った電柱を椅子がわりにするなどして記念撮影を行なった。/それはささやかながらも、新しいオーケストラの結成式だった──」。これは佐野之彦『N響80年全記録』冒頭の文章だ。

この日誕生した「新交響楽団」は、NHK交響楽団(N響)の前身である。翌27年の2月20日、日本青年館で第1回定期公演、当時の名称では「予約演奏会」を開催する。指揮は近衛秀麿で、メンデルスゾーンの序曲『フィンガルの洞窟』、モーツァルトの『イドメネオ』からバレエ音楽、シューベルトの交響曲第7番『ザ・グレイト』のほか、崩御した大正天皇を悼みグリーグの『2つの悲しい旋律』が追加演奏された。