週刊東洋経済 2020年8/22号
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巨額調達の流れは止まらず

2020年は選別が加速しそうだ。コロナ禍はベンチャー投資に水を差している。日本経済新聞社と投資家向けサービスのケップルの調査によれば、今年1~6月のベンチャー企業の資金調達額(速報値)は1042億円。前年同期比で47%減った。ベンチャーへの投資は、昨年まで拡大を続けてきたが、一気に冷え込んだように見える。

ところが、個別案件を見ると違った姿が浮かび上がる。1~6月では、太陽光発電サービスのVPP Japanの100億円を筆頭に、次世代電池を開発するAPBが80億円、越境EC(ネット通販)を手がけるInagoraホールディングスが53億円……と、巨額調達を実現しているのだ。

直近では8月4日、ECサイト構築支援サービスを展開するヘイが、米投資ファンドのベインキャピタルから約70億円を調達すると発表。決済サービスの米ペイパルなど数社からも出資を受けた。総額は非公表だが、関係筋によれば100億円を超えたという。今年最大規模だ。エンジニアなどの採用を急拡大し、今後1年半で現在200人の社員数を2倍にする計画だ。

「長期で株を保有し、上場後も機関投資家を呼び込んでくれるようなところから出資を受けたかった」。佐藤裕介社長はベインからの出資の経緯をそう語る。ベインが日本のベンチャーに投資するのはヘイが初めてだ。

現状の投資環境について、日本ベンチャーキャピタル(VC)協会の赤浦徹会長は「成長性のある、目立つベンチャーに、こぞって投資しようという動きが強い」と分析する。実はその兆候は昨年から出ていた。調達総額は拡大したが、調達社数は減少した。特定のベンチャーに資金が集中する傾向は強まり、1社当たりの調達額が大型化している。

資金の出し手であるVCにも投資余力がある。昨年のファンド設立数や資金規模は過去最高の水準だった。数百億円規模のファンドの組成が相次ぎ、ジャフコやグローバル・ブレインといった大手を中心に投資意欲は衰えていない。またゴールドマン・サックスやコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)など、米国の投資銀行やファンドも国内ベンチャー投資の担い手になりつつある。