モネの宮川社長は、孫正義氏と豊田章男氏をよく知る人物でもある(写真:モネ・テクノロジーズ)
2018年に発表されたトヨタ自動車とソフトバンクという異業種大手の提携は日本の産業界を驚かせた。そして両者の共同出資で、自動配送や移動店舗など、次世代移動サービスの「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」の開発のために設立されたのが、モネ・テクノロジーズだ。
モネにはその後、日野自動車やホンダ、SUBARUやマツダなど国内自動車メーカー7社が出資し、連合を拡大。新サービス開発に取り組む事業者による「MONETコンソーシアム」も設立し、既に580社以上の企業が加盟(2020年7月現在)する。今年4月から、モネはデータプラットフォームの本格運用を始め、移動データの管理や分析、課金や顧客管理、モビリティサービスに必要な機能を提供している。
モネを率いる宮川潤一社長兼CEOはソフトバンクグループの孫正義社長の懐刀として、長らく日米で通信事業に携わってきた。コロナ禍で人々の生活様式が大きく変わる中、モネは何を目指しているのか。宮川社長を直撃した。

われわれにとってチャンスばかり

──複数の自治体と行っているオンデマンドバス(専用アプリで予約し、指定した時間にバスに来てもらうサービス)などの実証実験は新型コロナの影響を受けたのでしょうか?

地方の交通弱者を対象にしたオンデマンドバスの実証実験は導入に向けての話し合いが5月から6月にかけて1カ月ぐらい停まった。サービスを利用した人の数は緊急事態宣言が4月に発表されたときは2~3割減ったが、またすぐに回復している。

【2020年8月3日7時30分追記】初出時、実証実験やサービスの利用状況の記述が誤っていました。お詫びして訂正いたします。

コロナ禍で相乗りを敬遠する動きがあると思っていたが、利用する人数が戻ったのだから、もう「生活の足」として定着しているということ。近所のよく顔の知った人たちばかりの相乗りだから、あまり影響を受けなかったという印象だ。

──とはいえ、シェアリングやライドシェア(相乗り)にはコロナ禍で逆風が吹いています。

個人的には厳しくなると思う。車両やサービスも従来とは違うものが求められている。実は、モネは新型コロナの感染防止策を取った車両の開発を進めている。

まだ試作段階だが、ドライバーと乗客の間に間仕切りをするだけでなく、換気システムを設置することで、空気が交わらないようにする。それは、病院同士をつなぐ車として使うことを想定している。

シェアードビジネスにとっては嫌な時期が来たのは事実だが、モネにとってはビジネスチャンスばかりだ。モネコンソーシアムの会員企業にアンケートをしたら、9割が(業績の)影響を受けているという。それでも、35%の会員企業が2021年度中に(移動を絡めた)サービスを開始したいと。急に言い出した感じだ。

2018年のソフトバンクとトヨタ自動車の提携会見で、新会社のモネ・テクノロジーズ社長に宮川潤一氏が就任することが発表された(撮影:風間仁一郎)

移動サービスの需要はフードデリバリーだけじゃない

──これまでMaaSに関しては様子見の企業が多かったように思います。企業の考え方がなぜ変わったのでしょうか。

みんな自粛して巣ごもりが嫌だったんじゃないのかな。外出できるとしたらどんな方法があるんだろうと考えたのかもしれない。移動手段として感染症対策ができた車の配車があったらよいという人もいた。

今回のコロナ禍ではフードデリバリーばかりがクローズアップされたが、われわれへの問い合わせでいちばん多かったのは医療MaaSだった。

長野県伊那市で医療機器や看護師を乗せた車両で患者のところに行き、病院にいるドクターが遠隔で診察する実証実験をやっている。そういった車両を導入できないかという自治体からの問い合わせはものすごくあった。高齢者が病院まで行くのは感染リスクがあるから、診察をする車が来てくれたらベターというわけ。

自治体からは行政サービスを“移動させたい”という要望もたくさんもらった。住民票や印鑑証明書を出張サービスで発行したいと。テクノロジー的には十分可能なので後は行政自身がデジタル化してくれたらいい。

本当は(新型コロナの感染を検査する)「PCRカー」を作りたいと思っている。なかなか許可をもらえないだろうなと思いながら。

──モネはもともと、地方での移動手段の提供などMaaSによる社会課題の解決を掲げていました。新型コロナで貢献できる領域が増えたわけですね。

まさに、それを痛感している。

「たられば」を言ってもしょうがないが、もし自動運転車があって、この新型コロナを迎えていたら、われわれはもっと社会の役に立つ会社だったと思う。ドライバーの感染リスクもなくなるし、滅菌システムを搭載することで乗客の降車後に消毒もできるのだから。

孫社長と豊田社長の「共通点」と「相違点」