週刊東洋経済 2020年8/8・15合併号
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今回の危機で世界がどう変わり、個人レベルではどのような変化が生じるかをまず整理しよう。そのうえで、「教養」というキーワードを基に読書について考えていきたい。

立命館アジア太平洋大学(APU)学長 出口治明(でぐち・はるあき)1948年生まれ。京都大学法学部卒業。日本生命保険入社。2008年ライフネット生命保険を開業(12年上場)。18年から現職。近著に『還暦からの底力』。(撮影:梅谷秀司)

まず新型コロナウイルスの蔓延により世の中は3つの点で意識が変わった。1つ目はITリテラシーの向上だ。ビデオ会議システム「Zoom」の活用が例に挙げられる。僕自身もコロナ以前はZoomで会議や講義をしたことがなかったが、今はZoomを使いこなしている。先進国の中で日本はデジタル化が遅れていたため、デジタル化の促進による生産性の向上が期待できる。

2点目はステイホームで家族や友人と過ごす時間の大切さを認識したことだ。以前は上司からの「飲みに行くか」という誘いに対し、「はい」と威勢よく返事をするという意識が社会に蔓延していた。だがステイホームをきっかけに、上司と飲みに行くよりも、家族や友人と過ごすほうがいかに楽しいかを認識する機会となった。実際、自粛中に上司とZoom飲み会をした人はどれくらいいるだろうか。

3点目はリーダーや政治に対する目が厳しくなったことだ。新型コロナウイルスへの対応をめぐり、リーダーはどのように行動しただろうか。米国の例を見てみよう。毎日会見で市民に語りかけたクオモ・ニューヨーク州知事のほうが、トランプ大統領よりも「信頼できるリーダーではないか」と僕は思った。周りを見渡しても、フェイスブックやツイッターで「うちの知事はしっかりやっている」「少し心配だ」などの発信が見られ、リーダーに対する市民の目が厳しくなっているのを感じる。

年功序列から成果序列へ

次に個人に生じる変化を考えたい。最も大きいのが働き方だ。