「コロナ禍の引きこもり状態で読むべき本」を何冊か挙げろという依頼を続けざまに受けたので、とりあえず、手元にある古典を紹介してみたのだが、あまり同工異曲では能がないので、今回は少し趣向を変えることにした。具体的にいうと、緊急事態宣言が解けたと同時にリアル書店に足を運び、その書店の棚に並んでいた本の中から面白そうな本を選んだのである。

作家・フランス文学者 鹿島 茂(かしま・しげる)1949年生まれ。フランス文学者。『職業別 パリ風俗』で読売文学賞評論・伝記賞を受賞するなど多くの受賞歴がある。『日本が生んだ偉大なる経営イノベーター 小林一三』など著書多数。(撮影:尾形文繁)

いや、やはり、本というのは、本屋で買わなければならないものである。そう、バーチャル書店ではなく、リアル書店で買ってこそ「自分の選んだ本」といえるのだ。なぜなのだろう?

それはバーチャル書店ではアト・ランダム性がまったく機能しないからである。バーチャル書店では書名ないしは著者名をあらかじめ「知っている」本しか注文できない。バーチャル書店はこの絶対的な不利を克服するために「お薦め本」をさまざまに用意するが、それとて、消費者の「知っている」ことを基礎にAI(人工知能)がこちらの思考を概算的に推測したもので、しょせんは「知っている」本にすぎない。出合い頭の遭遇がないから、アト・ランダムではないのである。

この点、リアル書店は素晴らしい。「出合い頭」という言葉こそリアル書店のためにある。まったく予想もしていなかった本と遭遇し、手に取ってみるとどうしても欲しくなって買ってしまう本でなければ、コロナ禍の最中とはいえ、読みふけることはできないのである。というわけで、出合い頭の「本」を以下に5冊選んでみた。