この2年間、文房具業界が固唾をのんで見てきた1つの試みが、8月1日、ついに動き出した。

その名は「コーラス株式会社」。業界2位のプラスが100%出資して立ち上げ、そこへ日本ノート、セーラー万年筆、オキナが加わる。

事業イメージはこうだ。1つの卸問屋に現在は4つのメーカーがおのおの営業をし、取引している。コーラスが稼働すると、各メーカーの営業部はコーラスへ出向、1つの卸問屋に営業するのはコーラスから1人に絞る。卸問屋に費やすコストを最小限に抑えるのだ。

コーラスの今泉壮平社長(プラス取締役)は「営業の重複を排することで生まれるリソースを新製品開発や新ビジネス創出に振り向けることができれば、メーカーがより強くなれる」と狙いを語る。

本格稼働は来年1月。4社の営業部を徐々に統合し、取引口座も一本化する。

反発と執念

このコーラス、実は2年前に頓挫した計画であることが本誌取材で明らかになった。ここに絡むのが、昨年末、プラスとコクヨがプロキシーファイトで角突き合わせた筆記具メーカー、ぺんてるである。ぺんてる争奪戦には、壮絶な「前哨戦」があったわけだ。

火花が散ったのは2018年5月、コーラス構想が表面化したとき。当初の計画は2社体制で、プラスとぺんてるが50%ずつ出資、社長にはぺんてるの和田優社長(当時)が就こうとしていた。ところがマスコミ発表の直前に話は流れる。複数の文具卸問屋が強く反発したのだ。

〈私達の総意を以て和田社長、耒谷(きたに)常務に思い止る様、説得したいと考えます〉

卸問屋業界の声明文には、抑えきれぬ怒りがにじむ。「プラスと組むなら、ぺんてるとの取引をやめる」。そんな声まで上がった。ぺんてる社内からも「プラスと組むのは、長年取引をしてきた卸に対する裏切り行為だ」といった声が噴出し、和田社長と耒谷元(きたにはじめ)・常務取締役(当時)は引き返さざるをえなくなった。

2年前に明るみに出た「コーラス」構想に、卸問屋業界は代理店会議を開いて強く抗議した

落胆を深くしたのは、コーラスに情熱を注いできた耒谷氏だった。混乱の責任を取る形でぺんてるを辞めた。

しかし、諦めなかった。M&A(合併・買収)に精通した田中康之社長率いるコンサルティング会社ASPASIOに移籍し、プラスに常駐しながら、新コーラスの形を模索する。