週刊東洋経済 2020年8/8・15合併号
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日本では平成の30年の間に宗教離れが急速に進んだ。文化庁の『宗教年鑑』に出ている数字を追っても、どの宗教も信者は激減している。神道系は約1500万人、仏教系は約2300万人減った。日本人は宗教に意味を見いだせなくなっている。

宗教学者 島田裕巳(しまだ・ひろみ)1953生まれ。東京大学文学部卒業、同大学院博士課程修了。日本女子大学教授などを歴任し、現在は作家、宗教学者。日本の宗教や日本人の宗教観を多面的に考察し、多くの著書がある。(撮影:今井康一)

確かに長寿社会が実現され、死後、自分の魂はどこに行くか?に人々は関心を持たなくなった。貧しかった時代には現実の世界が苦しく、せめて亡くなった後には浄土に行きたいと願った。ところが社会が発展し現世の暮らしがよくなると、それ以上にすばらしい来世をイメージできなくなった。僧侶でさえ浄土を信じていない。

日本の新宗教は、戦後の高度経済成長期に、農村部から都市に移動した人たちを信者に取り込み急成長したが、信者の高齢化などで衰退している。新宗教が信者に約束した現世利益も、経済的豊かさの実現で魅力を失ってしまった。

日本では新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、3密を避けるようになった。葬儀に人を呼ばなくなり、葬儀の簡略化がさらに進んだ。法事などを先送りしたり、やめたりする動きもある。仏教が信者をつなぎ留める唯一の手段だった葬儀の担い手という立場は、コロナによって失われた。これを機に、日本人と仏教との関係はさらに希薄化していくはずだ。