もりた・ちょうたろう 慶応義塾大学経済学部卒業。日興リサーチセンター、日興ソロモン・スミス・バーニー証券、ドイツ証券、バークレイズ証券を経て2013年8月から現職。日本国債市場での経験は通算で20年超。グローバルな経済、財政政策の分析などマクロ的アプローチに特色。(撮影:大澤 誠)

問題発生から半年以上経った今でも、新型コロナウイルス感染症は社会の最大の関心事であり、連日、メディアは感染動向やその経済的影響について報じている。

そして、この半年間、そのメディア報道などによって、われわれはこれまで一度も名前を聞いたことがないような「感染症の専門家」といわれる人たちの発言を真剣に聞き続けている。しかし、この経験を通じて、多くの人が、専門家といえども必ずしも「唯一の正解」を共有しているわけではないことに気づき始めたのではないだろうか。この7月以降、新規感染者数が急増する中で死亡者数がごく少数にとどまっている要因についても、専門家からはまだ共通した見解を聞くことができずにいる。われわれは、「専門的な知見」とはいったい何なのか、漠然とした疑問を抱きつつある。

自然科学の成果というものは専門家の間で広く認められた「唯一の真理」なのだと、われわれは信じてしまいがちである。しかし、現代の自然科学は、ガリレオやニュートンの時代のように広く誰もが理解しうるような普遍的な研究成果が次々に生み出されてくるものではない。それぞれの研究分野は過去の膨大な研究成果の積み上げの上に成り立っており、専門家といえども、非常に狭く限定された自分の研究分野以外のことはほとんど知らないといった、「たこつぼ化」が進んでいる。