「最大9.5万人の入院が必要」、感染第2波の入院推計として、6月19日に厚生労働省の専門家会議が示した数値だ。18通りの想定のうち、高齢者が全国で同時期に感染し、かつ感染力が強く自粛要請も遅れるという最悪の場合の数値だが、感染症専門家の強い危機感がうかがえる。

これに先立ち政府が5月27日に閣議決定した第2次補正予算案には、都道府県が病床確保などに使える交付金2兆2370億円が盛り込まれた。ICU空床1床につき30万円の空床確保料が設けられるなど、かつてない体制だ。

問題は病床不足ではない

一連の報道に接して、第2波に備えるには「とにかく病床を確保しなければならない」と多くの方が思っただろう。実際、4月下旬の第1波では、都市部を中心に混乱が生じた。院内感染の発生や救急搬送の受け入れ停止、新型コロナウイルス感染症患者(以下、感染者)対応以外に手が回らないなどの状況が混在し、どこに空床があるのかわからなくなったのだ。人々は医療提供体制の強化を、個々の病院もそのための支援を望んだ。しかし、筆者に言わせれば、備えるべきは「病床」ではない。

第2波やほかの緊急時にどこが何を担うのか、経験を生かした備えはつねに重要だ。しかし、確保の対象が「病床数」に偏重している目下の感染症対策に、筆者は強い危機感を抱いている。それが、かえって緊急時の対応力を後退させる危険すらあるからだ。

実際、日本には161万の病床があるが、30万床(うち急性期病床は16万床)は平時から空床だった。そして、それらは現在もほとんど感染症病床には転換されていない。現在のコロナ対策病床3.2万床には宿泊施設も含まれており、病院病床は6月末時点で7000床程度だ。では、なぜ余っている病床は使われないのか。