東亜石油の製油所に運び込まれたメチルシクロヘキサン。水素を分離し発電用燃料に

脱炭素エネルギーの切り札として洋上風力とともに、期待が高いのが水素である。

千代田化工建設、三菱商事、三井物産、日本郵船の4社は、世界でも例のない形で水素を長距離輸送する実証試験を始めた。

昨年12月、ブルネイで天然ガス由来の水素を利用して製造された「メチルシクロヘキサン」(MCH)を積み込んだ船が、川崎港に初めて到着した。MCHは東亜石油の製油所内の設備で水素とトルエンに分離。その水素を発電用燃料として同じ製油所内の火力発電所で燃やす試験が今年5月に始まった。分離されたトルエンは船に積まれ、ブルネイに戻る。そこで再び天然ガスから改質された水素と合成され、MCHとして利用される。

水素は燃焼させても二酸化炭素(CO2)が発生しないことから、脱炭素エネルギーとして期待を集めている。しかし、常温では気体で存在し、体積当たりのエネルギー密度が天然ガスの3分の1程度と低い。液体にするにはマイナス253度まで冷却しなければならず、輸送方法の確立が課題だった。

そこで千代田化工は、水素をトルエンと化学合成してMCHにし、体積を500分の1とすることで長距離輸送を実現した。ガソリンなどと同じ常温の液体として輸送でき、既存の石油インフラを活用できるのも強みだ。実証試験は11月まで行われ、安全かつ低コストで輸送できるかを確認する。

「再エネ水素」の挑戦

日本は水素の研究開発において、世界でもトップを走ってきた。政府は2017年12月に「水素基本戦略」を策定。カーボンフリー(脱炭素)のエネルギーの新たな選択肢として、水素を明示した。

しかし近年、ドイツなど欧州諸国との競争が熾烈化。日本が優位性を維持するには、実証試験を経て実用化を急ぐ必要がある。そのカギを握るプロジェクトが福島県浪江町で7月にスタートした。