脱炭素 待ったなし 出遅れ日本でもエネルギーシフトが本格化

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猛威を振るう自然災害。脱炭素化を進めなければ破局を免れない。私たちの暮らしやエネルギー会社の行方は。

本誌:岡田広行、福田 淳、中村 稔、梅咲恵司、大塚隆史

週刊東洋経済 2020年8/1号
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7月の大雨で大規模な冠水に見舞われた熊本県人吉市。災害の激増を食い止めるためにも脱炭素化は不可避だ(時事)

「数十年に一度」のはずの記録的豪雨や巨大台風が毎年のように襲い来る。その一因と考えられているのが地球温暖化だ。

二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量が今のペースで増え続ければ、世界の平均気温は産業革命前と比べ最大で3.9度上昇する──。国連環境計画の指摘だ。その気温に到達する前に、自然災害の頻度は桁違いに高まり、干ばつや大洪水が全世界に及ぶ。

破局回避にはCO2の大幅削減が必要だ!

そうした破局的な事態を回避するには、石油や石炭など化石燃料に依存したわれわれの経済活動や消費の中身を抜本的に見直す必要がある。「脱炭素」といわれる取り組みが求められるゆえんだ。

新型コロナウイルスパンデミックは、世界経済を深刻な不況に陥れた。どん底からの経済復興では、脱炭素化を実現する再生可能エネルギーや水素への投資を柱に据えようという「グリーンリカバリー」の機運が世界規模で盛り上がっている。

その動きをリードするのは欧州連合(EU)だ。7月8日、大胆な「水素戦略」を打ち出し、世界を驚かせた。2050年までに「グリーン水素」へ、累積で1800億〜4700億ユーロ(約22兆〜57兆円)の投資が行われ、新たに100万人分の雇用を生み出すという。

脱炭素化の機運は日本でも高まり始めた。電力会社や大手商社が洋上風力発電など再エネへの投資を本格化。脱炭素エネルギーを求める企業の声が強まっている。

コロナ禍により、石油や石炭、天然ガスの需要は軒並み落ち込んでいる。だが、再エネだけは拡大を続けると国際エネルギー機関は予想する。構造転換は着実に進んでいる。脱炭素の潮流を理解し、自らを変革できた企業だけが生き残る。

週刊東洋経済編集部
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