週刊東洋経済 2020年7/18号
書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

厚生労働省クラスター対策班(疫学データ班)メンバーの北海道大学の西浦博教授。「8割おじさん」は、新型コロナウイルス感染拡大の第2波への備えとは別に、長期的な社会政策の見直しも始めるべきと考えている。その真意を聞いた。

──新型コロナの流行を受けて、自身の意識が変わったとか。

今回は幸いにして、人類の大多数が死亡するような致死率が高いものではなかった。だが、もっと毒力の高いウイルスがいつ出てくるかわからないことに、われわれは真摯に向き合う必要がある。原子力発電所は、事故がありうることを想定せずに安全だと考えられてきたが、福島の経験でひっくり返された。新型コロナもある程度ノーマークに近かった。科学者として暗に信じていたことが覆された。

にしうら・ひろし 1977年生まれ、宮崎医科大学医学部卒業。蘭ユトレヒト大学博士研究員、香港大学助理教授、東京大学准教授などを経て、2016年から現職。専門は理論疫学。新型コロナウイルス対策では「接触を8割減らす」という政策の理論的支柱になり、「8割おじさん」との愛称も。(アフロ)

──どういうことですか。

これまで厚労省の感染症対策に関係してきたが、日本中の病院から患者があふれるようなウイルスは想定したことがなかった。厚労省は「これくらい病床が必要になるので用意してください」と都道府県に通知する立場だが、「対応しきれないくらいの感染者数が想定されるが、あなたの県では何をしても病床が足りないでしょう」では、行動を促す通知の意味をなさない。だから、病院からあふれるほどのウイルスは暗に想定しないようにしていた。

──毒力も感染力も高いウイルスは現れますか。

変異や進化が速い例がインフルエンザだ。致死率の推定では高病原性の鳥インフル(H5N1)が50%程度とされるが、こうした高病原性インフルが今後、人の集団の中で十分な感染性を持ち流行することはない、という保証はない。10〜50年くらいのスパンで出てくると考えられる。