週刊東洋経済 2020年7/18号
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日本は、強権的な都市封鎖(ロックダウン)などの施策を行うことなく、米国や欧州諸国のような感染爆発を防いだ。7月3日時点の感染者数は1万8950人、死者数は976人。人口10万人当たりの死者数は0.8人と、欧米諸国に比べると圧倒的に少ない。中国や韓国など東アジアの国々も同様に、欧米に比べて死亡率が低い。

日本の死亡率が低いことについて、厚生労働省の専門家会議は、「国民皆保険制度によって医療へのアクセスがよく、地方でも医療レベルが高い」「公衆衛生水準が高い」などの要因を挙げた。ほかにも、生活習慣や文化の違いが指摘されている。ハグや握手をしない、日本語の発音はほかの言語に比べ唾液の飛沫が飛びにくい、家の中で靴を脱ぐ、などだ。また、マスクを着ける習慣や、肥満などハイリスクを持つ感染者が少なかったといったことも指摘されている。しかしそれらだけで十分に説明できるものではない。

このアジアと欧米との差の“ミステリー”を説明しようと、さまざまな仮説が唱えられている。現状、何がわかっていて何がわかっていないのか。注目されている4つの仮説を検証していこう。

仮説1|欧州株と武漢株

1つ目は、アジアと欧米では流行したウイルスの毒性が違ったのではないか、というものだ。ヒトの細胞内に侵入したウイルスは、細胞の機構を使って自らのゲノム情報をコピーし増殖していく。その際に起こるコピーミス、つまりウイルスの突然変異によって毒性が変わったのではないか、との説だ。