コロナ禍で大胆に財政を拡張しなければならない状況にあるにもかかわらず、新興国の対外債務残高は7.5兆ドル(約800兆円)を突破し、利払い・償還費の確保が一段と困難になっている。大規模な債務免除が求められているのは明らかだが、債権者の反対は根強い。債務免除を許せば、その国は将来的に国際市場から資金調達できなくなり、投資や経済成長に悪影響が出るというわけだ。

ところが、こうした主張の根拠はかなり弱い。国際的な資金フローは投資や成長率を着実に押し上げるどころか、新興国経済を混乱に陥れるケースが目立つ。債務免除に反対する理屈としては、新興国は国際市場の「規律」にさらされなくてはならない、というものもある。独裁者や扇動政治家(ポピュリスト)の悪政を抑止するには、資本逃避の脅威が欠かせないというロジックだ。

しかし、この主張も今では正当性を失ったように思える。市場は悪政を止めるどころか、助長している。2009~18年の南アフリカがいい例だ。当時大統領だったズマ氏の腐敗した政権は公金を自らの懐に入れ、経済を空洞化させていた。だが、そうした横領行為が白日の下にさらされた後でも、南アには国外から資金が流入し続けた。ズマ氏は最終的に権力の座を追われることになるが、これは与党アフリカ民族会議(ANC)が放逐に動いたからであって、市場のチェックとは何の関係もない。