おべんとうの時間がきらいだった(阿部直美 著/岩波書店/1900円+税/230ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
[Profile] あべ・なおみ 1970年群馬県生まれ。獨協大学外国語学部卒業後、会社員を経てフリーランスのライターに。写真家の夫とともに日本全国を取材し、2007年からANA機内誌『翼の王国』で「おべんとうの時間」を連載。共著書に『おべんとうの時間1〜4』など。

弁当といえば、高校時代を思い出す。ある日、一心不乱に弁当をかっ込みながらふと顔をあげると、弁当箱のふたで手元を隠して食べる女の子が目にとまった。なぜあんな食べ方を? 気になって背後からそっとのぞくと、煮物の汁が茶色く染みたごはんが見えた。ミニトマトやブロッコリーのような彩りのない地味な弁当だった。

途端に動揺してしまった。自分の弁当も似たようなものだったからだ。田舎育ちの母が好んで弁当に入れるフキやタケノコの煮物が急に恥ずかしいものに思えた。弁当を通して、これまで意識することのなかった自分の姿を目の当たりにさせられた気がした。

著者はカメラマンの夫とともに、ANAの機内誌『翼の王国』の人気連載「おべんとうの時間」を手掛けている。取材をして文章にまとめるのはライターの彼女の役割だ。