水戸岡氏は「コロナ対策なんて、日本の住宅ではもともとできていた」と語る(撮影:梅谷秀司)
工業デザイナーの水戸岡鋭治氏は、JR九州の豪華寝台列車「ななつ星 in 九州」や新幹線800系などを手掛けた鉄道デザインの第一人者。観光列車を地域活性化の起爆剤にしたいと考える各地の自治体や鉄道会社からひっぱりだこの存在だ。
鉄道以外の交通機関のデザインにも携わっており、2019年11月から東京・池袋周辺を回遊する路線バス「IKEBUS(イケバス)」のデザインも行った。
水戸岡氏がデザインする鉄道車両は、鉄やプラスチックの代わりに木材をふんだんに使っている。天然の素材を使うことで、利用者に環境意識や物を大切にする意識を高めてもらいたいという狙いがある。
そんな水戸岡氏は、アフターコロナの時代における鉄道の役割をどのように考えているのだろうか。6月下旬のある日、都内にある水戸岡氏の事務所を訪ねた。

自宅をオフィスにできるようなデザインを

──水戸岡さんご自身は、外出自粛時はどのように仕事をしていたのですか。

この3カ月くらい電話も少ないし、打ち合わせも半分以下。こんなにゆっくりしたのは生まれて初めて。でも、将来は現在とは違うウイルスが来るかもしれない。そのときにあわてないような、どんなウイルスが来ても対応できるような、生活環境や生き方を準備しておく必要がある。

今回はそのときに備えて考える時間が与えられたと思っている。私たちデザイナーの仕事は豊かなコミュニケーションが生まれる場所を作って、みんなの生活を豊かにすることだけど、その前に「安心・安全」が先に来た。30年後くらいにこういう問題が来るんじゃないかと思っていたが、急に来たね。

コロナで人と人が接近してはいけないということになり、多くの人が在宅勤務を余儀なくされているが、自宅に仕事場を確保できない人はたくさんいる。それぞれの家をオフィスにできるようなデザインを考えないといけない。

自宅を必要に応じて一瞬でオフィスにできるパネルやカーテンがあるといいね。将来のオフィスも今とは変わる。広い空間だけあればよくて、スイッチを押すと天井からパネルが降りてきて、部屋を仕切るようなものにすればいい。

──鉄道のあり方も変わりますか。

住宅を仕切るという考え方は鉄道の車両でも使える。例えば、客室内に車両を仕切るパネルがあちこちから出てきて、瞬時に個室化するといった仕組みかな。電車の中を個人のオフィスにするシステムを作って、そこを予約すれば、通勤しながら仕事ができるとかね。

──最近の電車は窓を開けて走って、空気を入れ換えています。イケバスも窓を開けて走るのがコンセプトですね。