ほさか・なおき 1959年生まれ。東京大学大学院新領域創成科学研究科/大気海洋研究所特任教授。東京大学理学部卒業。同大大学院で海洋物理学を専攻、博士課程を中退し、85年読売新聞社入社。在職中、科学報道の研究により東京工業大学で博士(学術)を取得。2013年同社退社。(撮影:梅谷秀司)
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1年間に海に流れ込むプラスチックごみは800万トン。毎日自家用車1.5万台分のごみが流出している計算になる。「海洋中のプラスチックの重さが2050年までに魚を上回る」という衝撃的な推計が発表されてから4年、日本でもプラスチック製レジ袋が原則有料化された。待ったなしのプラスチックごみ問題に意識を向けるきっかけになりそうだ。

──意外だったのが、肝心のプラチック生産・廃棄量などの基本データが把握されておらず、放置されたプラスチックがどう分解・劣化していくかの研究もまだ結論が出ていない、ということでした。

国連などが言及する数字は、研究者の論文から引用したものです。各国データの集計も、事はそう簡単じゃない。とくに海については、流れ込むプラスチックごみ(以下、プラごみ)の多くが発展途上国から。ごみの山からペットボトルを拾って残ったジュースを飲むような子どもたちが大勢いるわけで、雨が降れば川に流れ、そのまま海に出ていってしまう。そういう国々に、プラごみの統計を取れと言っても難しい。プラスチックは土に埋めても半永久的になくならない、ということになってるけど、なくなるようだとの見解もある。一定の非常によい条件を与えてやれば、何十年かかかって食べてしまうバクテリアがいると。

──日常的にプラスチックが使われるようになってまだ50年。科学的な解明には時間が短すぎる?

土に埋めても、まだ結果は出ませんよね。そういうとき、科学の世界では極端な条件差を与えて実験する。その結果何かがわかったとしても、現実的にそんな条件が起こりうるかはまた別なわけです。

この間、どの添加剤をどう混ぜるとどう品質性能が高まるか、ものすごいスピードで研究されました。今度、それをどう捨てるかについては社会が関わってくる。廃棄コストが半分になりますといっても、社会が振り向いてくれなければ、その研究は意味がないことになる。その辺のモチベーションが廃棄研究では上がらなかったのかもしれない。欲しいものを買うときは気分が高まるけど、捨てるときは高まらないのと同じですね。