国境紛争での死者発生は中印関係を一気に緊迫させた。写真は現場付近に展開するインド軍部隊(AP/アフロ)

6月15日、中印国境で両軍が衝突した。投石や殴り合いでインド側に20名の死者が発生、多数が中国に連行された。両国の国境地帯で死者が出たのは1975年以来。国際政治の地殻変動が、中印関係にも断層を広げる。

国境紛争地帯の西部、中国が実効支配するアクサイチン地域。ギャルワン川(インダス川支流)は、そこから実効支配線を西にまたいでインド側のラダック地方に流れる。インド紙によれば、事件発生地はギャルワン渓谷のインド側だ。

5月5日以降、中印国境では3カ所で小競り合いが発生していた。ギャルワン渓谷ではインドが実効支配線の自国側で道路を建設中で、それを一方的な現状変更と見なした中国側が、約8000人の部隊を展開させていたという。

事態の悪化を望まない両国政府は、6月6日の中将級会談をはじめ、高位級実務者会合を5回以上開いて緊張緩和を目指した。だが、渓谷で旅団長レベルの会談が開かれたその日の夜、両軍が衝突。中国軍西部戦区の報道官は翌日、インド軍が約束を破り、実効支配線を越えて違法活動を展開し、中国側を挑発したことが原因との声明を発表した。

筆者は国境マニアで、中印国境のインド側を旅したこともある。経験上、インド軍がつねに無実といえないことも知っている。だがここで重要なのは、両国関係は近年、緊張が高まっており、火がどこから燃え上がっても不思議のない状態だったということだ。