33歳で亡くなった、ルーマニア生まれの伝説的ピアニスト、ディヌ・リパッティ

詩人・中原中也(1907〜37)は、初めて会う人に必ず「バッハの『パッサカリア』を聴いたことがありますか」と尋ねたという。「聴いたことがない」と答える人がいると、彼は心底うらやましそうな顔をして、「あんなにすばらしいものに出合える喜びが残されているあなたがうらやましい」と語ったのだそうだ。

この逸話の信憑性はともかく、バッハをまだ好きになっていない方に、「あんなにすばらしいものを好きになる喜びが残されているあなたがうらやましい」と声を大にして言いたい気持ちは中也と同じ。バッハの音楽には、趣味の域を超えて“人生の伴侶”とでもいうべき価値があるように思える。