おおさき・ひろし 1953年生まれ。78年関西大学卒業、同年吉本興業入社。ダウンタウンのマネジャーなどを務め、2001年取締役東京制作営業統括部長。05年専務取締役、06年副社長、09年社長に就任。19年から現職。(撮影:梅谷秀司)
エンターテインメント業界にも、コロナ禍は大きな影響を及ぼしている。劇場は長期休業を余儀なくされ、テレビの収録も激減。芸能人は活動の場を求めてYouTube(ユーチューブ)などでの動画配信に続々と参入している。ビジネスのあり方が大きく変わろうとする中、吉本興業が描く戦略とは。

──6月19日に5つの劇場を再開することになりましたが、それまで3カ月以上閉鎖していました。

全劇場を閉めたのは108年の歴史の中で初めてでしたが、社員や芸人さん、その家族の安全・安心を守ることが最優先です。それを確保したうえで、一日も早く全劇場を再開したい。

NGK(なんばグランド花月)をはじめとした劇場は、お客様、芸人、スタッフや社員が集まる大切な場だと思っています。

──劇場を閉鎖したことで、今年の前半だけで20億~30億円の損失が出るという話があります。

前期(2020年3月期)は50億円ほどの赤字です。劇場を再開しても当面は客席の間隔を空けて、収容定員の12%前後しかお客様を入れることができない。だから今期の業績もかなり厳しい状況で、来期まで赤字が続いてしまうかもしれません。

──100億円程度の銀行融資枠を確保したそうですね。

うちの財務担当が頑張って枠を確保してくれた。あとは10~20年かかってでも返していけばいい。非上場にしたときに400億円弱の借金をしましたが、ビルを売却したりしながら何とか返すことができました。100億円くらい頑張れば返せると思います。今は売るビルがないので大変ですけど(笑)。

──100億円借りても心配する必要はないと。

心配してもキリがない。笑いながらちょっとずつ返していくしかないんです。会社が潰れずに、社員やスタッフの給料が払えて、芸人さんにもギャラが払えるのであればそれでいい。数字ばっかり見つめると暗澹(あんたん)たる気持ちになりますけど、頑張ればできると思っています。「吉本興業がそんなことを言っているならわれわれも頑張ろうか」と思ってもらえればいい。

週刊東洋経済 2020年6/27号
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