有料会員限定

相部屋施設への入居を強要、歪んだ生活保護の現場 おかしなローカルルールがまかり通っている

✎ 1〜 ✎ 4 ✎ 5 ✎ 6 ✎ 最新
拡大
縮小
仕事も住まいも見つからず、焦りは募るばかりというAさん(撮影:藤田和恵)

特集「コロナ雇用崩壊」の他の記事を読む

週刊東洋経済 2020年6/27号
書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

「生活保護を申請するには、まず無料の宿泊施設に入っていただきます。部屋の中にいくつか2段ベッドがあるので、そこで共同生活をしてもらいます」

派遣切りに遭い、社員寮からも追い出された神奈川県内の男性Aさん(40代)は5月初め、生活保護の利用について地元自治体に相談した。新型コロナウイルスの感染拡大の真っただ中にもかかわらず、自治体職員から申請の“条件”として提示されたのは「相部屋施設への入居」だったという。

感染防止には人一倍気をつけていたAさん。職員に「そんなところに入るくらいなら、(申請は)やめます」と伝え、この日は同県が開放していた県立武道館に身を寄せた。一方で事態は切迫しつつあった。いくら求人に応募しても面接さえ受けられない。所持金もついに10万円を切った。

金が欲しければ感染リスクを負え──。申請者の命を軽んじるかのような条件に困り果て、民間の支援団体に相談したところ、支援者同行の下、改めて生活保護を申請することになった。支援者が窓口で、国が個室利用を進める方針を示しているはずだと指摘すると、ビジネスホテルに宿泊しながらの申請がようやく認められたという。

関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
特集インデックス
コロナ雇用崩壊
トーマス・コーカン教授「低賃金労働者への影響甚大」
米MITビジネススクールの泰斗に聞く
コロナ禍で失業者続出の実態を現地リポート
山谷・寿町 日雇いの街のコロナ禍
仕事が細り環境は厳しい
職を失い生活が困窮する外国人労働者には、差別の壁も立ちはだかる
おかしなローカルルールがまかり通っている
学費が支払えず中途退学も…学生アルバイトの生活難
アルバイト代を学費や生活費に充てる学生の困窮が浮き彫りに
エコノミストに聞く
エコノミストに聞く
リーマン時と様相異なる弱者に厳しいコロナ雇用危機
低賃金産業や非正規雇用に失業が集中している
Part3 負担強いられる弱者たち
申請の手続きをめぐるトラブルや支給の遅れが目立つ
中堅医師が無給で勤務、コロナ医療を担う「無給医」たち
大学病院では無給の大学院生まで駆り出されている
Part2 戦いの最前線と届かぬ支援
労使のキーマンに聞く
労使のキーマンに聞く
どんな嵐が吹いているのか
始まった大失業時代、異次元「コロナ切り」の衝撃
Part1 長期自粛の深すぎる爪痕
コロナ雇用崩壊
自粛長期化がもたらす「大失業時代」の惨状
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内