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『アメリカン・プリズン 潜入記者の見た知られざる刑務所』 『ビジネスデジタル・デモクラシーがやってくる!』ほか

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民間が建て、裁判所が満たす。内部は監獄映画そのもの
評者/ジャーナリスト 中岡 望

『アメリカン・プリズン 潜入記者の見た知られざる刑務所ビジネス』シェーン・バウアー 著/満園真木 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)
[Profile] Shane Bauer 米『マザー・ジョーンズ』誌のシニア・レポーター。ナショナル・マガジン・アワード(報道部門)、ゴールドスミス・プライズ(調査報道部門)、ヒルマン・プライズ(雑誌ジャーナリズム部門)などの受賞歴を誇る。共著にイランでの囚人生活を描いた『A Silver of Light』。

「刑務所を民営化する」という提案をしたら、日本では猛反発を食らうだろう。しかし刑務所の民営化構想は古くからある。哲学者ジェレミ・ベンサムが刑罰政策を“効率的”かつ“人間的”なものとするために刑務所の民営化を提案したのは1791年だ。中央に監視塔を配して効率的に監視する刑務所で、「パノプティコン」と呼ばれる。企業は囚人に1日16時間労働を課し、利益を得る。

当時、ベンサムの案が採用されることはなかった。しかし、現在それはいくつかの国で現実化している。米国ではルイジアナ州政府が1844年に最初の民営化を実施。経費を削減したい州政府と新事業で利益を上げたい企業の思惑が一致したものだ(囚人たちの強制労働は州政府にも利益をもたらした)。

ちなみに1865年(この年の4月に南北戦争終結)に奴隷制度廃止を決めた「憲法修正13条」の条文には、適正な手続きを経て収監された囚人の強制労働は例外として容認すると書かれている。奴隷制廃止後に、民営刑務所は急増した。

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