スマートフォンには、日本企業の最先端電子部品が数多く用いられている(撮影:尾形文繁)

5月でほぼ出そろった上場企業の2020年3月期決算。新型コロナウイルス感染拡大の影響で6割以上の企業が今期(21年3月期)の業績予想を見送ったが、電子部品業界は大手各社が予想数値を公表。太陽誘電は第1四半期まで、日東電工も第2四半期までの予想を開示した。

このうち、通期で営業増益の予想を出した大手は日本電産(前期比13%増の1250億円)のみ。村田製作所が公表した営業利益見通しは2100億円と前期比で17%減。京セラ(25%減の750億円)、TDK(28%減の700億円)も減益予想だ。ただ、電子部品各社がこうした予想を出せたのは、新型コロナの事業影響がほかの業界より相対的に軽く、見通しが立てやすかったからだ。

確かに混乱はあった。1〜2月に中国で新型コロナの感染が広まると、中国に築かれていた巨大サプライチェーンが瞬く間にマヒ。顧客の自動車やスマートフォンの工場が止まり、さらには自社の工場も操業休止を余儀なくされた。

2月中旬には、iPhoneを手がける米アップルが、20年1〜3月期の売上高が1月公表の予想値を下回ると発表。翌日の東京株式市場では、iPhoneの主要部品を生産する村田製作所やTDK、アルプスアルパインなど、主要な電子部品メーカーの株価が軒並み下落した。業績への悪影響が避けられない、との見方が広がったからだ。

しかし、20年3月期の決算発表前に実際に業績を下方修正したのは、TDKやアルプスアルパインなど一部にとどまった。サプライチェーンの機能不全があったにもかかわらず、影響が限定的だったのはなぜか。その要因の1つとして各社が指摘するのが、「前倒し需要」だ。