その映像はあまりに衝撃的だった。5月25日、米中西部ミネソタ州ミネアポリスで身柄を拘束された黒人男性のジョージ・フロイド氏が白人警官に首をひざで圧迫され、死亡する事件が発生した。

「息ができない」。同氏が何度も訴える姿が市民によって撮影され、SNS(交流サイト)で拡散された。それをきっかけに全米各地で白人リベラル派を含めた抗議デモが広がり、欧州など世界各地にも波及。事件から2週間以上経ってもデモは収まっていない。

一部は暴徒化し、略奪行為で多数の逮捕者が出ている。首都ワシントンDCやニューヨークなど多くの都市で夜間外出禁止令が発令され、州兵が動員された。

ただほとんどは平和的な抗議活動であり、その矛先は今や警察からドナルド・トランプ大統領の強権的姿勢へと向いている。リベラル対保守。11月の大統領選挙を控え、米国社会を分断する亀裂が深まっている。

白人との格差が鮮明

デモ拡大の背景には複合的な要因がある。まず根深い人種差別への怒りだ。白人警官による黒人への過剰な暴力事件は以前から頻発している。デモ参加者は「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切だ)」というスローガンを掲げ、「悲劇を何度繰り返せば気が済むのか」と叫ぶ。

そこへ加わったのが、新型コロナの影響だ。全米での死者数は11万人を超え惨憺(さんたん)たる状況だが、単位人口当たりの黒人の死者数は白人の2倍を超す。黒人には小売業や配達業、病院など感染する危険性の高い現場で働く人が多い。もともと医療弱者で基礎疾患のある人が多いことも高死亡率の原因と指摘される。