近いのに遠かったサハリン、日ロ以外の歴史も重なる ノンフィクション作家 梯 久美子氏に聞く

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かけはし・くみこ 1961年生まれ。北海道大学文学部卒業後、編集者を経て文筆業に。2005年のデビュー作『散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。ほかに『昭和二十年夏、僕は兵士だった』『狂うひと 「死の棘」の妻・島尾ミホ』などがある。(撮影:尾嶝 太)
サガレン 樺太/サハリン  境界を旅する
サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する(梯 久美子 著/角川書店/1700円+税/285ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
日本が陸上国境を持ったのは2カ所。最初の国境が樺太(からふと)(現サハリン、旧名サガレン)におけるロシア帝国との国境で、戦前は内地から国境観光の旅行者が訪れた。ソ連時代は外国人の入島が制限されていたが、今、北の美しい島は気軽に訪問できる。

──廃線探訪が高じてサハリンへ。

戦前のいわゆる外地で日本の鉄道の跡が残っているのはサハリン、台湾、満州。生まれ育った北海道に近く、引き揚げ者の話を聞いたこともあるからサハリンにした、と書きましたが、近いのに実は遠い。

サハリンは1990年代まで外国人が入れなかった。日本から見て歴史が断絶していて、感覚的に遠いんです。私は地図も好きなのですが、日本では今のサハリンの詳しい地図を入手するのが難しいし、ネットでも現在の鉄道の様子を知ることができない。行ってみないと何もわからないという面白さがありました。

──意外と広く、夜行列車もある。

面積は北海道と同じくらい。島の南北を走る夜行列車を知らない人も多いでしょう。旧国境の北側の鉄道はソ連が、南側は日本が整備しました。樺太庁が造った線路に、王子製紙が造った線路。国境近くは日本軍が終戦直前に突貫工事で造った軍用路線です。駅名は何回も変わり、重層的な歴史の上を走っているようで近代史的にも面白いですね。

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