5月下旬、モスクワのクレムリン(ロシア大統領府)筋から北方領土交渉に関する興味深い情報が入ってきた。この情報源は、日ロの外交チャンネルで情報のやり取りが円滑に進んでいない時期になると、機微に触れる情報を筆者に流してくる傾向がある。筆者がその情報を紹介する論考を書けば、政府関係者にクレムリンのメッセージが伝わることを計算しているのだろう。こういう情報の扱いには、細心の注意が必要だ。情報を右から左に流すのではなく、情報提供者の意図を明らかにする必要があるからだ。そうすることで、国民の真実を知る権利に奉仕することができる。

まず、コロナ禍が日ロ関係に与える影響についてクレムリン筋は〈コロナウイルス感染拡大のためロシアと日本との関係は、その終息まで交渉が凍結されることとなったが、今、問題なのは、はたしてコロナウイルスの終息後には、本当に交渉が変わることなく再開できるのか、それは楽観的予測にすぎないのではないかという点だ〉と指摘したうえで、ロシア憲法改正をめぐる国民投票に関心を向けさせようとする。〈延期されたロシア憲法改正の「国民投票」だが、すべてのロシア人の理解は、この憲法改正によってロシアと日本との平和条約の交渉は議論が終わる、というものだ。プーチン大統領がこの世論を変えることは非常に難しい。外交政策を含めてプーチンに対する批判は強まり、彼の支持率が過去最低になった今、プーチンは世論に抵抗できないだろう。ナショナリストと愛国勢力は、ロシア領土の一部が外国に譲渡されることはないという憲法修正条項に特別な力点を置いており、その指導者たちは日本へ島を譲渡することについてプーチンの立場を明確にするよう求めるつもりだとすでに発言している。プーチンの回答によって彼らの将来の出方も変わってくるだろう〉。憲法改正のための国民投票で、北方領土交渉はいっそう難しくなるとの見方を示す。