あずま・ひろき 1971年生まれ。東京大学大学院博士課程修了。ゲンロンの創業者。専門は現代思想、表象文化論など。93 年に批評家としてデビュー。著書に『動物化するポストモダン』『ゲンロン0 観光客の哲学』など。

感染症との戦いを経て、社会はどう変わっていくのだろうか。哲学者・批評家の東浩紀氏に聞いた。

──世界各国がロックダウンに動きました。

2月から3月にかけて米国や欧州各国が国境を封鎖して、急速に移動を制限していったが、知識人も市民もほとんど抗議せずに受け入れたことに驚いた。普通の状態なら批判が出てきて当然なのに、「感染拡大防止」の名の下に、なすすべがない状態だった。

EU(欧州連合)のアイデンティティーとは移動の自由だったはずだ。それさえも一瞬で崩れ去る。「グローバル化」の掛け声の舌の根も乾かぬうちに国境を閉鎖する事実。それは思想や文化の面において、大きな傷跡を残すと思う。

1990年代、リベラルな思想で知られる、ドイツの哲学者のユルゲン・ハーバーマスがNATO軍によるコソボ空爆を容認した。それに匹敵するような大きな転換点になるのではないか。リベラル知識人にとって国境を開放することは何よりも善のはずだったが、今後は簡単には言えなくなる。

日本はどうだろう。よくも悪くもあいまいな景色しか見えてこない。産学共同体的な相互監視による自粛強化、社会的な差別……。どれも古くから私たちが見てきた光景だ。国家が罰則を作って人々の行動を制限するところまでいかなかったのは、救いなのだろうが。

権力とITが結び付く

──権力と国民との関係性に変化は出てくるのでしょうか。