新型コロナウイルスの影響で臨時休校が長期化する中、にわかに現実味を帯びてきたのが学校の入学時期を9月に移行する「9月入学」案である。宮城県の村井嘉浩知事の会見中の発言に端を発し、その後東京都の小池百合子知事や大阪府の吉村洋文知事らが賛成を表明したことで一気に議論に火がついた。

ここでは、将来の制度設計を考えるための参照点となるような科学的根拠を示したい。制度設計を変更する場合の課題や行政手続き、実現可能性についてはいったん脇に置いておくこととする。

まず初めに、長期にわたる休校には負の影響が大きい可能性がある点について言及しておきたい。過去に、臨時休校がもたらす影響について分析した論文は複数発表されている。例えば、1990年にベルギーで生じた教員のストライキでは2カ月間の臨時休校が実施された。休校を経験した子どもたちは高校までの留年率が高まり、大学での成績も低下したことが報告されている。

また、アルゼンチンの小学校で発生した88日間に及ぶストライキでは子どもたちの30〜40歳代での賃金が男性で3.2%低下、女性で1.9%低下したと推定されている。臨時休校は学力や学歴の低下だけでなく、「逸失生涯所得」への影響も大きい可能性があるのだ。

とくに臨時休校の影響を受けやすいのは、より学年の低い子どもである。米メリーランド州では、降雪などの天候要因による臨時休校では、高学年より低学年の子どもの受ける悪影響が大きかったことが明らかになっている。