にしうら・ひろし 1977年、大阪府出身。2002年、宮崎医科大学医学部卒業。ユトレヒト大学博士研究員、香港大学助理教授、東京大学准教授などを経て、16年4月から現職。専門は理論疫学。

テレワークの目的は人同士の接触を減らすこと。接触機会の「8割削減」を唱えてきた、政府の専門家会議メンバーである北海道大学の西浦博教授を直撃した。(インタビューは5月18日に実施)

週刊東洋経済 2020年6/6号
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──新規感染者は大きく減りました。「せっかくここまで頑張ったのだから、もう少し頑張ってゼロにしよう」と言う人もいます。

実をいうと、専門家の有志メンバーがオープンに議論する場があって、時にはみんなで怒鳴り合いながら、かつ健康的にその話し合いをしたことがある。そのときは、国立感染症研究所の同志の先生が「これだけ下げられたのだから、1回、韓国や台湾のように新規感染を消さないか」とみんなに聞いた。「そうすれば、再び海外から感染が入ってくるまでの短い間かもしれないが、『新しい生活様式』ではなく、本当に元の生活に戻れるよ」と。それでみんな「さあどうするか」と話し合った。

そのときわかったのは、新型コロナでは感染者全体の約30%が不顕性(無症状)と推定されているが、さらに、症状が軽微で気づかなかったりする人も相当数いること。検査で確定した患者が氷山の一角であるという度合いは激しい。

仮に東京の自粛が5月いっぱいまで続いたうえで、さらに1カ月それを続けても、歓楽街などのハイリスクの場で火種は完全には消えていかないだろう。新型コロナを完全にゼロにするには相当の日数がかかるため、経済への打撃を考えると、さらなる行動制限を伴う可能性が高い排除というものは、選択肢としては見通しが立てがたいだろうという結論に至った。

──無症状者の一部が2次感染を起こす感染症は過去にもあった?

インフルエンザも感染者の3〜4割が無症状で、そこからも2次感染が生まれている。だが、それに加えて新型コロナは高齢者を中心に致死率が比較的高い。結果、医療体制を維持するために社会として放置しておけないということになった。まれな事例だと思う。