きうち・たかひで 1987年から野村総合研究所所属。日本経済の分析、ドイツ、米国で欧米の経済分析を担当。2004年野村証券に転籍、07年経済調査部長兼チーフエコノミスト。12年7月から17年7月まで日本銀行政策委員会審議委員、この間独自の視点で提案を行う。17年7月から現職。(撮影:尾形文繁)

FRB(米連邦準備制度理事会)がついにマイナス金利政策を導入するとの観測が、米国で浮上してきた。4月分の雇用統計で失業者が急増したことや、トランプ大統領がマイナス金利政策を導入するようFRBに圧力をかけたことがきっかけだ。しかし実際には、FRBがマイナス金利政策を導入する可能性は低い。導入に向けたハードルはかなり高いだろう。

だいぶ前のことだが、2010年にFRBのスタッフは、金融政策を決めるFOMC(米連邦公開市場委員会)に、マイナス金利政策導入の問題点についてのメモを提出した。そこでまず指摘されたのは、FRBが銀行にマイナスの金利を押し付ける権限を持っていないとする法解釈だ。関連法の条文には、「FRBは準備預金に対する金利を銀行に支払うことができる(the Fed can pay banks interest on their reserves)」と規定されているだけだ。その金利をマイナスにする、つまり銀行がFRBに金利を支払うことは認められないとする解釈が一般的だ。