うそが悪循環する日本の政治、歴史に学べば野党は強くなる 東京大学教授 五百旗頭 薫氏に聞く

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いおきべ・かおる 1974年生まれ。東京大学法学部卒業。東京都立大学助教授、東京大学社会科学研究所准教授などを経て現在は同大学院法学政治学研究科教授。博士(法学)。専攻は日本政治外交史。著書に『大隈重信と政党政治』『条約改正史』、共編著に『戦後日本の歴史認識』など。(撮影:尾形文繁)
〈嘘〉の政治史-生真面目な社会の不真面目な政治 (中公選書)
〈嘘〉の政治史-生真面目な社会の不真面目な政治 (五百旗頭 薫 著/中公選書/1500円+税/256ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
安倍政権がさまざまな批判を浴びつつも長期化し、「野党がだらしない」と言われる。政権担当可能な野党をどのように育てていくか、という点においては、戦後(55年体制)よりも、戦前の政党の歴史を学ぶほうが有意義であり、実際に戦前の野党のつくり方と似た手法で野党は育ちつつあると指摘する。

──政治家のうそを「必死の嘘」と「横着な嘘」に分類していますね。

絶対的権力にはうそは要らない。それなりの野党や異議申し立てがあるからこそ、うそが必要になる。見抜かれまいと政治家が懸命に隠すためのうそが「必死の嘘」。うそを語る政治家に権勢があったり、支持する人が多かったりしてまかり通ってしまうのが「横着な嘘」だ。

横着な嘘が横行すると政治についてまじめに議論する気分が社会から消えてしまい、シニシズム(冷笑主義)が蔓延する。最近の日本では政治家の言葉が雑になってきた。保革対立は不毛だったかもしれないが、その対立軸すらなくなってからは、ただのごまかしだけになった。

自分についてきてくれる人をまとめることが政治のプロの条件になって、その外にいる広大な無党派層を説得しようとはしていない。

──現在の日本では、横着な嘘の弊害が大きく出ているようです。

首相官邸主導が強まる中で官僚制の自律性がかなり侵害されている。各省庁の意見を聞かないから情報も入らない。官邸のスタッフが少ない人数で膨大な案件をこなしているので、人の意見を十分聞く余裕もないだろう。

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