金融市場を研究するようになって40年近く経つが、市場というのは実に複雑で理解しがたく、興味深い。本稿を執筆している5月上旬時点で、米国を代表する株価指数のS&P500は2850ポイント近辺で推移している。3月の年初来安値から25%以上も値を戻しており、新型コロナウイルスが世界的に流行する前につけた過去最高値と比べても下落率は15%程度にとどまる。米国経済が1930年代以来となる大恐慌に向かっていることを示すデータが次々と浮かび上がっているのに、なぜ米国(や多くの国)の株価はこれほど堅調なのだろうか。

もちろん、株価の見通しは大きく割れている。多くは弱気シナリオで、S&P500は1600ポイントまで下落するとの見立てもある。経済の崩壊が何カ月にもわたって続くと考えれば、妥当な見通しだ。しかしその一方で、来年早々にも上げ相場が到来し、同指数は4000ポイントを突破する可能性があるとする向きもある。経済はV字回復どころか、むしろコロナ後に勢いが増すという強気のシナリオだ。ワクチンが広く利用できるようにならないことには、まずありえない話だとは思うが。