日本のPCR検査の態勢整備の遅れに対する批判は多い(毎日新聞社/アフロ)

新型コロナウイルスの危機が広がる中、安倍政権は迷走を続け、布マスク配布に代表される的外れの政策を重ねている。なぜこの政権がかくも無能なのかを考察すれば、その要因を一つひとつひっくり返すことで政府の立て直しができるはずである。

第1に、政府の失態の根底には、感染の実態を把握していないことがある。日本でPCR検査の件数が極めて少ない理由として、政府の専門家会議は実務に当たる地方自治体の保健所や衛生研究所の態勢が不十分なことを挙げている。しかし、これらの研究機関の多くは行革の名の下に独立法人化され、予算や人員が抑制されている。保健所の数も大幅に削減されてきた。地域社会でデータを集めたり衛生管理の仕事をしたりする組織は軽視されてきた。そうした仕事は、改革を立案した中枢部の官僚には十年一日のごときルーチンに見え、そういう部署はリストラすればよいという話になった。

他方、安倍政権の中枢部では経済産業省出身の官僚が首相に情報と提言を上げていると伝えられている。この種の官僚が主導する政策は、国家戦略特区、地方創生など、自治体や他の役所に企画書を提案させ、選別して予算をつけるという手法が多い。実務担当者にはポンチ絵とコピーライターの能力が求められる。安倍政権がコロナ危機への対策として打ち出したのも、行動変容やら新しい生活様式やら、下手なキャッチコピーである。緊急対策であるはずの補正予算に感染拡大終息後に使う旅行、飲食などを補助する多種のキャンペーンの支出が組み込まれているのも、官僚のプロジェクト中毒の表れである。日本の行政におけるルーチンの軽視と、見栄えばかりを追いかける夢物語の横行が、政府の無能化の原因である。首相に振り付けをするのもこの種の官僚なので、首相の言葉は宙に舞い、それを具体的な事業に落とし込む堅実な実務担当者はいない。