たかい・ひろゆき 神戸大学経営学部卒業、住友商事入社。非鉄金属本部で17年間、うち7年間は英国ロンドンで貴金属や、銅・アルミなどベースメタルの取引を担当。その後、金融事業本部長やエネルギー本部長を経て、住友商事グローバルリサーチ社長。2018年4月から現職。(撮影:梅谷秀司)

一時はパニック状態となった株・債券・為替など金融市場も徐々に平静を取り戻しつつあった中、4月20日のニューヨーク原油先物市場で期近物の価格が大きく水面下に沈むという前代未聞の珍事が起きた。

WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート)原油の5月限は翌21日が最終決済日(納会)に当たり、この時点で建玉を有する取引参加者は漏れなくすべての未清算残高を反対売買、もしくは現物の受け渡しによって決済する必要があった。納会の朝時点での当該限月の未清算残高が10万枚強(1枚は1000バレル)あった。

先物取引では納会までに売り方は買い戻し、買い方は売り戻すことで建玉を清算し損益を確定せねばならない。しかしニューヨークの先物市場では現物決済も認められていて、価格が現物市場から大きく乖離するようであれば現物での決済も可能だ。すなわち、相場が安すぎれば買い手は現物で引き取り、高すぎれば売り手は現物で引き渡す。