『〈清潔〉の近代』『感染症と法の社会史』は撮影日までに本の入手が間に合いませんでした(撮影:尾形文繁)

人類が長距離移動を容易にしたのは特筆すべきことだと思う。しかし、新型コロナウイルスの蔓延で、国家間の移動がストップした。国内の移動、そして職場への移動も制限され、私たちが普段の生活で接する世界が一挙に狭くなった。

その一方で、今私たちは情報化社会がもたらす恐怖も味わっている。欧米での感染者や死者の増加、国内でのクラスター発生、そんなニュースが同時進行で目に入ってくる。現代社会では情報を遮断することは困難で、同じ恐怖を世界中で共有する事態となった。

順天堂大学 医学部 医史学研究室 助教 澤井 直(さわい・ただし)1975年生まれ。京大文卒、同大学院修了。専門は医史学、解剖学史、科学史。主な著訳書に『ガレノス─西洋医学を支配したローマ帝国の医師』など。(撮影:尾形文繁)

新型コロナウイルスの蔓延はグローバル化の功罪を見つめ直す契機になるだろう。歴史の中で感染症はどう語られてきたのか。それを知ることは私たちが生きていくための道しるべとなるはずだ。

私たちは歴史から何を学ぶことができるのか。まず最初に、それを考えるうえで参考になる1冊を挙げたい。

『気候と人間の歴史・入門』(エマニュエル・ル=ロワ=ラデュリ著、藤原書店、2009年)である。本書では気候が人間の歴史に与えてきた影響、そして未来に与えうる影響が語られる。私たちの過去、現在の行動が未来の社会を大きく揺さぶるのである。その意味では、感染症も同じだ。感染症というものを少し外に置きながら、人間の営みについて考えたい。

『気候と人間の歴史・入門 【中世から現代まで】』E・ル=ロワ=ラデュリ 著、稲垣 文雄 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

次に皆さんが最も関心を寄せる感染症関連の本を紹介したい。