新型コロナウイルスの感染が拡大する中で日本の国家と社会に大きな変化が生じている。こういうときは、細部を注意深く観察することが重要になる。

3月28日、首相官邸で行われた記者会見において、安倍晋三首相は新型コロナウイルスに感染した患者に対し、臨床研究(観察研究)として使い始めている新型インフルエンザ治療薬「アビガン」(一般名ファビピラビル)の薬事承認を目指す意向を表明した。〈「正式に承認するに当たって必要となる治験プロセスも開始する考えだ」と述べた。/アビガンは新型インフルエンザ治療薬として備蓄されているが、中国で新型コロナウイルスの治療効果が確認されたとの報告が出ている。安倍首相は「世界の多くの国から関心が寄せられている」として、薬の量産を開始するとした。/ただ、アビガンについては妊婦が服用すると胎児に副作用が出るおそれが指摘され、新型インフルエンザ薬としても従来の治療薬では効果がないか不十分なときに限って使用が認められている。/また、膵炎(すいえん)の治療薬「フサン」(一般名ナファモスタットメシル酸塩)についても、観察研究として、新型コロナウイルスに感染した患者に対し、事前に同意を得たうえで使い始める考えも表明した〉(3月29日付「朝日新聞デジタル」)。

安倍首相は、医療や製薬の専門家ではない。治療薬として承認されるためには、徹底した動物実験の後、人による治験が行われる。そのうえで承認される。これは本来、高度な専門家の管轄で、政治が介入する問題ではない。しかし、新型コロナウイルスによる肺炎に対する治療薬がない状況では、政治主導で薬の承認過程を短縮することに異論を唱える国民は少ないと思う。同様に、ワクチンの開発も通常とは異なる手続きで行われることになる。