いとう・くにお 1951年生まれ。75年一橋大学商学部卒業。92年同大教授。2015年から現職。中央大学大学院戦略経営研究科特任教授を兼務。三菱商事や東京海上ホールディングス、住友化学などの社外取締役を歴任。現在、小林製薬、東レ、セブン&アイ・ホールディングスの社外取締役。14年に公表した「伊藤レポート」で時の人に。(撮影:今井康一)

「8%」という具体的なROE目標をあえて盛り込んで話題を呼んだ「伊藤レポート」発表から6年。株主資本の活用に加えて、環境課題や労働分配率の向上などの新たな要求が経営者に突きつけられるようになってきた。こうした流れにどう向き合えばよいのか。伊藤邦雄・一橋大学CFO教育研究センター長に聞いた。

──伊藤レポートの公表後に日本企業のROEは改善しました。

1、2年ぐらい前にROEは上場企業平均で10%ぐらいになった。新型コロナウイルスの流行で今は落ちているが、レポート発表時の約4.5%からするとはるかに高まった。8割以上の上場企業が中期経営計画の主要な指標であるKPI(重要業績評価指標)にROEを入れている。認知度も高まったし、経営者にもROEを含む資本生産性を高めなくてはならないという認識が広まっている。

──ESG経営や同投資も一般的になりつつあります。

2006年にPRI(国連責任投資原則)というのができたことが大きい。その中で6原則が示され、投資家はESGをこれから分析対象としますというのと、企業側もESGについてちゃんと開示してくださいという2つの原則が入った。

機関投資家はESGに関わる原則をちゃんと守って、PRIにお墨付きをもらわないと、例えばGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のような公的資金の運用機関になれなくなった。

時計の針を戻すな