週刊東洋経済 2020年4/18号
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「アクティビスト(物言う株主)」の米エリオット・マネジメントの幹部が来日したのは、1月下旬のことだ。目的は、ソフトバンクグループ(ソフトバンクG)の孫正義会長兼社長、後藤芳光・最高財務責任者、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を統括するラジーブ・ミスラ副社長らと面談することだった。

エリオットは、年金基金などから資金を集め、運用総額は2019年末で402億ドル(約4兆4000億円)。19年に企業に迫った提案数は14と、アクティビストの中で最も多いことに加え、かつてアルゼンチンや韓国といった国家を相手取って訴訟を起こしたこともあるだけに、「世界最強のアクティビスト」と恐れられる存在だ。

そんなエリオットは、ここ最近、通信企業やハイテク企業をターゲットにしている。19年には米通信大手AT&Tに約30億ドル投資し、資産売却や株主還元を求めた。そして、ついに日本のソフトバンクGに狙いを定めたのだ。

エリオットは、ソフトバンクGの発行済み株式の約3%を、25億ドル(約2725億円)以上の資金をかけて取得。そのうえで、同社が保有する中国アリババ株などを売却し、その資金で200億ドル規模の自己株買いを実施すること、社外取締役を増やすこと、そしてビジョン・ファンドの透明性を向上させることなどを要求した。

これに対し孫社長は、当初、アリババ株の売却には否定的だった。自己株買いには賛意を示したものの、「時期や金額は社債償還などとのバランスを見ながら」と含みを残していた。

ところが、それからわずか1カ月半ほどで態度を一変させる。

向こう1年かけて4兆5000億円分の資産を売却し、最大2兆円分の自己株を買い入れると発表したのだ。その前に発表していた分も合わせると、自己株買いは最大2兆5000億円にも上る。

社外取締役についても6月の株主総会で3人以上の増加を提案するという。つまり、エリオットによる3つの要求のうち2つが、あっという間に通った格好だ。

それだけではない。会社側は肯定も否定もしないが、この間、エリオットはMBO(経営陣も参加する買収)も提案したもようだ。