いわい・かつひと 1969年東京大学助教授、72年マサチューセッツ工科大学Ph.D.取得。73年イェール大学助教授、79年イェール大学コウルズ経済研究所上席研究員、81年東京大学助教授、88年ペンシルベニア大学客員教授・プリンストン大学客員准教授、89年東京大学教授。『会社はだれのものか』の著者。(撮影:ヒダキトモコ)

今から50年前の1970年、『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』は、ミルトン・フリードマンの「ビジネスの社会的責任は利潤を増やすこと」と題するエッセーを掲載した。

会社は株主のものである。会社の経営者が、倫理観に駆られて、環境への配慮や雇用の維持、地域への貢献といった目的を追求するのは、本来ならば株主が自由に使い道を選ぶべき利潤を、経営者の一存で使ってしまうという意味で、一種の窃盗、いや「社会主義だ」と批判したのである。当時は冷戦下。戦闘的な反社会主義者だったフリードマンにとって、社会主義者であることは、資本主義下での窃盗よりも悪い「悪」であった。

このエッセーは、20世紀後半から今までどの経済学者が書いたものより大きな影響力を持ち、米国を中心として、会社経営のあり方に関する標準的な見方をつくったのである。その末裔がカール・アイカーン氏や村上世彰氏のような「物言う株主」である。