(撮影:尾形文繁)

「企業価値向上」の大義名分の下、企業に襲いかかるアクティビストたち──。狙いは、安値で買った株式を高値で売ることで得られる差額「転売益」だ。しかし、そもそも株式で利益を得ようとすることに課題はないか。アクティビスト肯定・否定の立場から安延申氏と中野剛志氏が激論を交わした。(構成 梅垣勇人)

──アクティビストのようなファンドが注目を集める事例が増えています。彼らをどう評価しますか。

中野 アクティビストに限らず、企業の価値を高める改革というとき、それは誰の価値なのか。株主への配当を増やす改革がイノベーションを促進し、従業員の給料を上げたというのであれば文句はない。けれども、1997年度から2018年度までの日本企業(資本金10億円以上)の給与、配当金、設備投資等の推移を見ると、給与は4%減、設備投資は2%減。一方で経常利益は3.2倍、配当金は6.2倍だ。国民に占める割合は、給与を受け取る従業員より配当を受け取る株主のほうがはるかに少ない。これこそが格差拡大の原因。日本は短期的な株主利益を優先するようになってしまった。

中野剛志(なかの・たけし)1971年生まれ。96年東京大学教養学部卒業後、通商産業省(当時)入省。2005年、英エディンバラ大学大学院博士号取得。近著に『富国と強兵』(小社刊)、『日本の没落』(幻冬舎)など。(撮影:尾形文繁)

安延 経済学は市場における自由競争が最適解を生むとは言っているけど、分配については何も言っていないよね。利益の配分を決めているのは、あくまで経営者。アクティビストもそこまで言っていない。短期的な利益を追求することがないようにファンドの運用期間は長期のものが増えている。ファンドは必ずしも短期利益だけを追求しているわけではない。

安延申(やすのべ・しん)1956年生まれ。78年東京大学経済学部卒業後、通商産業省(当時)入省。2000年に通産省退職、ヤス・クリエイト創設、同社代表取締役。17年に村上世彰氏の推薦で黒田電気社外取締役就任。19年から現職。(撮影:尾形文繁)

中野 でも10年間(株式を)持ち続けたとしても、狙いが毎四半期の利益を最大化せよということであれば、結局は同じでしょ?