「えちごトキめきリゾート雪月花」の車両モデル。天井近くまで窓が大きく配置されている(撮影:尾形文繁)
空前の観光列車ブームが続いている。中でも異彩を放つのが、JR西日本が5月に投入を予定する「WEST EXPRESS(ウエストエクスプレス) 銀河」だ。豪華寝台列車でもグルメ列車でもない。リーズナプルな価格で「鈍速」の旅を味わう列車だ。
設計したのは建築家・デザイナーの川西康之(「イチバンセン」代表取締役)。鉄道車両のデザインで注目を集めるだけでなく、デザインを通じた街おこしや社会支援にも意欲的に取り組む。異能のデザイナーの素顔に迫った。

今年1月、「WEST EXPRESS 銀河」が報道陣に公開されると、ニュースサイトのトップ記事に躍り出た。5月から京都・大阪─出雲市を夜行特急で、10月以降は大阪─下関を昼間の特急として、週末を中心に運行される予定。ユニークなのは、新幹線と特急を使えば4時間ほどの京都─出雲市を12時間近くかける鈍速ぶりだ。

JR西日本には豪華寝台列車「瑞風(みずかぜ)」がありますが、「銀河」は対極の位置づけです。沿線は日本のふるさとの原風景みたいな魅力的な地域が多いのに、定住人口が減っている。だから安価でカジュアルな列車を走らせ、交流人口を増やしたい。一人旅、女性、家族連れなど鉄道旅の面白さを知ってもらい、リピーターになっていただく。それが銀河の使命です。

停車時間も含め、長い時間をどう過ごしてもらうか?「時間のデザイン」が最大のテーマでした。寝そべって景色を眺め、車内を歩き回り、客同士が会話を楽しむ。簡易寝台、女性車両、フリースペース、ファミリーキャビンなど、6両すべてを異なるデザインにして、座席の形も柄も変えました。

「銀河」のボディーは西日本の美しい海と空を表す瑠璃紺(るりこん)色。内装は車両ごとに変え、長い時間をどう過ごすかにも意を払っている(撮影:尾形文繁)

銀河の誕生は、2016年から走る列車デビュー作「えちごトキめきリゾート雪月花(せつげっか)」が引き寄せたともいえる。川西が師と仰ぐ工業デザイナー、水戸岡鋭治は「地域、駅、列車を総合的にデザインして夢を語る、僕のやり方をいちばん理解し、新しい発想で一匹狼的に挑戦しているのは川西君でしょう」と評する。